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「言の葉の庭」を久々に見ていろいろ考えた話その1

というわけで今日は「言の葉の庭」の話。

確か劇場公開は2014年の梅雨ごろだったと記憶しています。

個人的には映画館で2回、BR買って3回くらい見たのかな、という感じです。

 

既存の新海作品の中では抜群に好きなのですが、まだ見ていない方は是非。

好きな方もこのブログを見て見直していただければこれ幸い。

とりあえずあらすじ(というかストーリーのネタバレ)はこちら。

ja.wikipedia.org公開前、監督は「恋」の物語だということを明言しています。

キャッチコピーは「愛よりも孤悲(こひ)の物語」。

監督によると今回の物語は西洋文化が入った後の「恋」の概念ではなく、まだその概念が日本人になく『こい』に『恋』の字があてられる前の「孤悲」の物語を描きたいと述べていました。

そうした物語を描く中で、ヒロイン『ゆきの先生』の高校の国語教師という職業はある種、この物語を貫くテーマ性の象徴になっていると思うのです。

 

今、象徴という言葉を用いましたが、何度か視聴しているうちに『言の葉の庭』の中にはこうした物語を彩る『象徴』や『暗示』が実に多く散りばめられていることに気付きます。簡単なものばかり、的外れなものもあるかもしれませんが備忘録程度にまとめていきます。

 

①「歩く」ということと「足」と「靴」

物語の中で27歳のゆきの先生は生徒の嫌がらせにより学校へ行くことができなくなり、再び「自分の足で歩くことができるよう練習をしていた」と語っています。また物語のラストで今度は15歳のタカオがゆきの先生との日々を「歩く練習だった」とモノローグするシーンがあります。「(自分の足で)歩く」ということは「大人になる(なっていく)」ことの暗示だと思われますが、「歩く」という行動を行うのは「足」であり、その足を保護するのは「靴」です。かくしてタカオが「靴」職人を目指すということに意味が出てきます。「ゆきの先生が再び歩くお手伝いをする」というタカオの一つ目の立ち位置が確立するように思います。

 

また晴れが続くところでタカオが「(ゆきの先生のような)大人に追いつくためには靴を作ることのような気がする」といったモノローグから、足と靴と大人に強い関連性を作っているように思います。

さらに晴れの日に会えない二人、晴れの新宿御苑で「明日天気になーれ」とゆきの先生が靴を放り投げるシーン、まだ大人であることを放棄している、ないしタカオと出会ったことで少しづつ持ち直していた気分が再び沈む象徴のように感じます。

 

加えて最後に告白を断った後、ゆきの先生がはだしで駆け出していくシーン、靴がなくても一歩踏み出すという等身大の人間を表現しているように感じます。

 

また、大人の女性の足という15歳の少年にはドキッとする未知の部分に触れるという体験を描きたかったとしか監督はインタビューで述べていませんが「まるで世界の秘密そのもののように彼女は見える」という冒頭のタカオのモノローグから、未知の「足」という人生を作る象徴に戸惑いながら触れることで、少しづつ大人の世界を知る、という象徴性があるように感じられました。「大人」という意味ではビールもその役目を担っているのではないでしょうか。

他にも靴からゆきの先生へパンアップするなど、足と靴をピックアップしたカットがたくさんあるので是非探してみてください。

 

②雨

監督は、インタビューで雨は第三の登場人物というほど重視しています。

「雨の日にしか会えない」という物語性と「雨宿り=ちょっとした休憩」という意味を持たせたかったそうで、確かにいろいろな雨が登場します。

ざっと何回かみただけでも例えば

・冒頭・本降りだが激しくはない普通の雨。出会いのシーン。日常。

 

・二度目以降の出会いシーン・梅雨。出会い時より弱い場合が多い、とくにゆきの先生の心が落ち着いている、明るい場合は天候も同様に薄明るくなる

 

・靴を作るためにタカオが足を採寸するシーン・完全な天気雨、ただし雨の強さは頻繁に変わる→揺れる心情?

 

・クライマックス新宿御苑のシーン1・晴れの日の新宿御苑で初めて会う→和歌と連動「雨が降ればここにとどまってくれるか?」という返し歌に対して「たとえ晴れでもここにいる」という二人の恋を象徴するシーン

 

・クライマックス新宿御苑のシーン2・いわゆるゲリラ豪雨→怒涛の展開の暗示?

 

・告白をゆきの先生が断るシーン・真っ暗闇の中の激しい雨→悪い展開

 

・タカオ、ゆきの先生に怒鳴るシーン・怒鳴っている際に、断続的に風が吹き横殴りになる雨→ただし本音をゆきの先生が語ると同時に、天気雨に同時にED「Rain」へ

 

 

 

めちゃくちゃ長くなりそうなので今回はここまで。

次回は「位置関係」と「登場人物の設定について」

やろうかなと思います。