岩井俊二監督 処女作 「Love letter」を見た話
岩井俊二の「Love letter」を見ました。
1995年公開、中山美穂主演のラブストーリーです。
価格:5,280円 |
あらすじはこんな感じ。
婚約者・藤井樹を二年前に亡くした渡辺博子(中山美穂)は、その三回忌の帰りに、彼の母親に誘われ、彼の中学時代の卒業アルバムを見せてもらう。忘れられない樹への思いを吐き出すため、そのアルバムに載っていた、樹が昔住んでいたという小樽の住所へ手紙を出した。すると数日後、なぜか返事の手紙が。その手紙の主は、同姓同名のクラスメート、女性の『藤井 樹(中山 美穂のダブルロール)』。やがて博子と樹の奇妙な文通が始まる。
婚約者と同姓同名の女性と文通をするという発想がすごく良かったこと、渡辺博子と藤井樹、両役とも中山美穂にすることで、視聴者を妙な気分にさせるというのは面白かったです。
ただ、冒頭が博子が雪山で寝転んでいるところから始まっていたこと、婚約者を山の遭難で亡くすという悲劇的なバックグラウンドを持っていたことから、博子に感情移入して見ていたのですが、結局女性の『藤井樹』の読後感がとっても良くて、博子の読後感はそれほど…という、感じに収まっていました。まあエンタメ映画を狙って作ったわけではなさそうなので、さもありなんという感じではありますが。
博子と樹にわけて内容を整理しようと思います。
博子:樹(女性)とのやり取りと、卒業アルバムの写真を見ることで、自分が樹と似ていることに気づき、婚約者の樹の初恋の相手は文通相手・同姓同名の樹で、その面影のあった自分と付き合ったのだと感じ始めます(物語の最終盤で実際そうだったということが判明するのですが)。婚約者に悪気があったわけではないと思いますが、女性としては最悪の気分かもしれません。私はそいつの代わりかい!みたいな。うーん…婚約者殺されても文句言えない。死んでるんだけど。
結局、博子は樹(女性)から送られてきた手紙を樹にすべて返却します。なんというか、あの人の思い出はあなただけのもの、というある種の諦めに近い感情を感じてしまうのですが、それが死別した婚約者というのがすごく悲しい。一応最終的に救い的な描写はあるんですけど、これ本当に救いなのか?という疑問が拭えないまま、終了。
樹(女性):文通を通して、彼との中学時代のエピソードを思い出し、中学時代の樹(男性)に自分が恋心を抱いていたことを次第に自覚していくストーリーラインです。最終的に両思いだったことがわかり、そこでエンドロールに入るのですが、その甘酸っぱさたるや、甘酸っぱすぎてため息つくこと請け合い。とにかくカメラワークと光源の使い方、そして小樽の美しい景色が混ざり合って、せつなーい、甘酸っぱーい気持ちになります。
現実にありそうでないんだよ…こんな夢みたいな物語…みたいな気分にはなりますが、オタク的にはこういう初恋いいですねー…って感じです。
樹サイドだけで物語が構成されてたら、素直によい読後感で終わったと思います。そのくらい完成度も、映像美もすごい。とても前世紀に作られたとは思えない。
でも樹の裏側には博子がいるんですよね。本来的には対比したときの落差に味わいを感じるものなのかもしれないんですけど、さすがに悪趣味すぎねーかとも思ってしまうんですが、まあそういう作風の人なんだろうな岩井監督…(wikiで他の作品一覧眺めながら)。
とか何とか言いながら、全体的には見る価値ありのいい作品だと思います。何より映像美が本当にすごい。ノスタルジックな感情に浸りたいときにおすすめの作品だと思います。