ADHD的視点で見るポリコレの意味不明さ

差別を巡る問題について、される側が悪いと言いたいわけでは決してないんですが、昨今ポリコレポリコレととにかくやかましい世の中ですので、ちょっと思ったことを書こうと思います。

とかく、SNSでは、これは差別だ！あれは差別だ！と騒ぎ立てる世の中であります。
もちろんいろんな意見や立場があるので、ことさらに否定はしませんし、辛い思いをされた方にはなんと声をかけたらよいのか正直戸惑うこともあります。

ただまあ、なんというか実際に当事者の方ともやり取りしていく中で、それはどー考えてもおかしいだろ、みたいな思想で動いている方々や、「自分の認識できる少数派以外の人間は全て多数派に属する人間」と本気で信じていらっしゃる方も少なからずおり、正直なところ驚きを隠せません。なんなんだおめーらは。

ちなみにですが、心療内科からがっつりADHDの診断を頂き、自立支援制度を利用しておる立場上、私はカテゴリ的には発達障害者ということになります。

この後、場合によっては、極めてめんどくさいことになりそうなので、フェアのために断っておくと　ヘテロであり、男性であり、ADHD以外は五体満足です（このくらい示しておけばよいでしょうか。言うまでもなく皮肉です。）。その視点でお読みください。

別に差別される側が差別に関して真っ当かと言われると案外そうでもない

これは少し前のお話であり、私とご本人のために少しフェイクを混ぜておきますが、とある知人の女性にかなりフェミニストな方がおりまして、普段から男性は女性をうっすら軽視している、が口癖のような方です。その彼女がある日烈火のごとく怒りをあらわにしておりまして、曰く、転職しようとした会社の女性軽視が甚だしい、と。面接では女だから妊娠して使い物にならないでしょ、など散々なことを言われた、とのことでした。今時びっくりするくらいのすさまじい会社ですが、知人には深く同情します。二時間近く愚痴を聞かされたので、余程腹に据えかねたのでしょう。

一方で、彼女が日常的にTwitterで「ADHDだから忘れ物した」などと軽口を叩いていることを知っている身としては、なんとも言えない相槌を打つことしか出来ませんでしたし、話の流れ上、当然ながら彼女はADHDではありません。

別にADHDのtweetに関して、彼女に面と向かって注意を促すつもりは皆無です。はっきり言ってしまえば、そんなもんだろうと思っていますし、とにかく人は自身と違う属性に関して想像力の働かない生き物ですので、私もまた過去にどなたかを傷つけてきた自覚もありますし、今後も傷つけてしまうのだろうと思います。

ただ、それだけ女性軽視だなんだと普段から叫んでおきながら、平気でADHDはネタにするその根性は正直どうかと思うんですよね。極端な話「差別上等！ADHDは生きる価値がないから死ね！」の方がいっそ清々しく、友達になれそうな気すらします。

別に女性だけではなく、不思議なことにLGBTの方だろうが、身体障害者の方だろうが、アスペとADHDはネタにしてもよい、という不文律があるんじゃないかと思うほど、普段差別に神経を尖らせている方がネタにしているのをよく目にするので、なんなんだコレは、と思うわけですよ。あんたらが「理解されない、苦しい」と言ってること、そのものじゃんソレ。

断っておきますが私自身の話で言えば、ADHDネタ自体はそれほど不快ではありません。立場上「いいぞ、もっとやれ」とは言いませんし、社会が今後もう少し優しくなってくれればありがたいな、とは思いますが、ある種の社会不適合性は事実としてある障害ですので、個人的には多少の差別的なアクションは、現状理解できないものではないと思っています。とはいえ、その事実を知る者に、面と向かってADHDを馬鹿にされたり不当な扱いを受ければ、それは喧嘩になるとは思いますが。

「差別はよくないこと」と言ってると自分が差別しない人みたいな錯覚に陥る

あまりにADHDを例に出して、結局お気持ち表明と言われるのも本意ではないので、別の例を出すとすれば
「チー牛」はセーフだけれど「飯炊きオナホ」はアウトみたいな価値観がはっきり言ってわかんないんですよね。どう考えても等しくアウトだろ。アウトと割り切った上で楽しんでたんじゃねーのかよ。

これはマジョリティ、マイノリティ関係なく真っ当な社会人・学生あるあるだと思うんですが建前上「差別はよくないものだ（外国人差別はダメ、飯炊きオナホはダメetcetc）」と表明しつつ、この括弧の中に入ってないものは、別にどうでもいいや、という無意識は間違いなくあると思っています。じゃないとチー牛ネタにしようなんて思わないですよ。

もちろん建前は非常に大事なので、大っぴらにやれ、とは言いませんし、社会上は当然アウトなわけですが、建前はあくまで建前なんだと自覚する必要はあるんじゃないかと最近思うわけです。なぜか建前で差別反対！って言ってると、自分は差別しない人と思い込むパターンが多い気はするんですよね。

結局、一皮むけば誰も聖人君子ではなくて、みんな差別するんですけど、それを自覚しつつ、少数派の皆さんは訴えることは訴える、多数派の皆さんは耳を傾けるべきは傾ける、をしていくしかないんだと思います。また、付け加えれば、人類性悪説過激原理主義派の活動家の皆さんは、少し黙って頂けないかなぁ、とやや少数派カテゴリーに在籍する当事者的には強く願うところであります。

正直こんなこと言うの当たり前すぎて疲れるんだけど、大々的にポリコレ運動する前に足元と隣人を見ろ、という話のような気がしますね。